「気づいてない壁」がわかれば克服できる

Language lies in your inner movement memory.(ことばは内部運動の記憶)

いちばんの基本的に立ち返ってみます。
ことばって何だっけ?

無意識に操っているので、考えてみることもない、ふだんのことば。
その一方、がんばって努力して勉強して覚えるのに一苦労の外国語。

どちらも、ことばです。
特徴の異なる「音声記号のシステム」(ソシュール)が言語。

そのような概念を聞いても、あまりピンと来ませんよね。
じぶんの体験に照らして思い浮かべてみましょう。

ことばが聞き取れるのは、なぜでしょう?
音の列が空気を伝ってやってくるだけなのに。
不思議ですよね。

何が起きているのでしょうか?
専門家に聞くと、こんなことばが帰ってくるでしょう。
「聞き取れるのは、音の列を捉える脳の処理過程のおかげ」です、と。

じぶんの心の中の出来事ですよね?
一体、どんな「こと」なのでしょうか?

Empathemian『It generates」

Vocalize and internalize your inner speech.(肉声でインナースピーチを身につけよう)

山鳥重さんは、こう説明します。

①「日本語の単音を聞き分けられるのは、心像(心理表象)が成立しているから。(*注1)
それをおんいんと呼ぶ。それは、じぶんの持っている音に分類する、ふるいのような分類装置。」(*注2)

②「音韻として心に表象することは、音韻として心で発音していることである。
声にはせず、口も動かしていないが、閾値いきち下で発音している。
この意味で、言語に限れば、知覚は即運動である。
概念的には知覚と運動は切れているが、心理表象としては切れていない。」

③「構音も記憶である。(*注3)
何度もくりかえして聞き、かつ発音しているういちに、構音過程が自動化され、
必要な単音についての運動レパートリーが蓄積される。」

Empathemian『It keeps generating』

Develop your inner speech.(インナースピーチを育てよ)

とても重要なことが述べられています。
かみくだいてみましょう。

①・聞き分けられるのは、心の中に音のイメージがあるから
音のパターンの体系(音韻)が聞いた音を分類するフィルターなる

②・音韻を心の中で表現するとは、心の中で音を発していること
・声を出したり口を動かさなくても、無意識レベルで脳内に音を発している
・言語に限って言うと、音を感じると同時に無意識のうちに動きが伴う
・知覚と運動は別々の概念だが、心の中ではつながっている

③・音の生成は、何度も聞いたり発音したりするくりかえしによる記憶の力
・このプロセスによって、無意識のレベルで自動的に動くようになる
・そして必要な音の単位に対する運動パターンが蓄積される

Empathemian『Keep growing your inner speech』

Cultivate your inner speech.(インナースピーチを培え)

肝心なことは:
① 脳内で音列のパターンを再現するインナースピーチ現象が常に起きている
② 音を生成する運動プログラムを発展させる
② くりかえすプロセスで無意識化・自動化する
③ 「聞く・話す」は一体。脳内に運動パターン蓄積(記憶)

ことばは「声の身体運動」
そして「運動の記憶」なのです!

脳内に湧き上がるモヤモヤした、ことば以前のかたまりを、
音の列に生成して、出力するしくみ。

発話時のまとまりである音節は、別の言い方をすると、発声の運動プログラムの単位。(*注4)
脳の働き、つなわち、インナースピーチ化によって運動プログラムが構築されていきます。
その過程が、ことばを使えるようになる営みに相当します。

英語の習得の新しい視点:「音のつらなり」を生成する運動プログラムを比較する

ふだん、このようなことは想像もできませんね。
何の努力も必要としないように思われる言語。
実はその活動は、複雑な心の動きをことばに紡ぎ出すシステムなのです。

そのことを実感できるのが第二言語の習得です。
読んで覚える勉強は、ひとつの手段です。
本質は、音でことばを生成する不断の営み、つまりプラクティスです。

学習は、運動の記憶をつくりあげ、使っていくこと。
インナースピーチの視点で、英語の習得を捉えると、道がひらきます。

なぜ、聞きとれない?
以下動画をごらんください。

日本語の音を生成する運動プログラムは、英語のそれとはちがいます。
日本語に特化されているために、英語が聞き取れないのはあたりまえのこと。
それは、継続的なプラクティスによって、かなり克服できます。

静かに坐り、没頭してプラクティスする場さえあれば、
あとは、地道にインナースピーチを育ていくだけです。
それ以外のことは、考えなくても、ついてきます。

インナースピーチ(10)対話パターンの脳内再現と記憶へつづく

エンパシーム英語トレイル「没頭してインナースピーチ化を進めるトレイル」

出典・参照:山鳥重『言葉と脳と心・失語症とは何か』『ヒトはなぜことばを使えるか』、以下のエンパレットなど

(*注1)心像・心理表象(Mental representation) 心がつくりだす様々なイメージ、表象、カタチ

(*注2)音韻・音素・音節について

・音韻(Phonology): 音列のパターン、組み合わせの構造・体系
・音素(Phoneme): 言語音の最小単位(母音・子音)
・音節(Syllable): 発話音の最小単位(構音の運動プログラム単位)

(*注3)構音について。言語能力の本質は、音声の切れ目までのひと続きのセリフ(センテンス)で言語音を組み立てられることです。これを構音と呼びます。構音とは一般にはなじみのないことばですね。筆者の父は生前「構音障害」という病気を患い、音を生成する運動プログラムを実行する筋肉が麻痺して発声できませでした。ミッション「エンパシームの輪を広げたい」のページに体験談を掲載しています。詳細はミッションの英語版The Revelation that Uncovered My True Missionにより詳しく叙述しました。なお、今回、引用した山鳥重先生の著作も、失語症・言語障害の研究を通して、心、脳、ことばの核心に迫る研究に長年、従事されてきました。

(*注4)発声(Vocalization)を特報づける要素について。これらの運動要素が組み合わさってことばを生成しています。

① プロソディ(Prosody)強弱のリズム、イントネーション、テンポなど
② 構音(Articulation)口や舌などの運動や位置の変化
③ 発声(Phonation)声帯の振動によって音を生成する
④ 共鳴 (Resonance)口腔や鼻腔などの共鳴空間づくり
⑤ 息づかい(Breathing)空気の出し方、間合い
⑥ 声の質(Voice Quality)なめらかさ、あらさなど

インナースピーチ (8) 音とイメージの身体化を試す

脳を活性化させるしくみ ③ [声の入力・出力]

インナースピーチ(4)声の身体運動が内語化する

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