Empathemian,『Feedback and Feedforward』

Give yourself Feedback and Feedforward.(フィードバックとフィードフォワードの両方を)

プラクティスは、じぶんが変化するプロセス。
くりかえし、ふりかえり、つながりをつくる営み。
・気づきをもたらす
・ものの捉え方が変わる
・直観や想像力を磨かれる
・自覚と行動につなげる

実現のカギとは、具体的に何をすることなのでしょう?
前回のプラクティスの意味 ② (むずかしかったことがやさしくなる、変化のプロセス)から一歩踏み込んでみましょう。

フィードバックとフィードフォワード

フィードフォワードということばがあります。
昨今、学校や職場での教育、コミュニケーションの現場でよく使われるようになりました。
「フィードバックよりもフィードフォワード」といったニュアンスで使われることもあります。

「過去の失敗よりも、未来に向けて前向き」という姿勢が大事である、といった意味あいです。
たしかにそうです。でも、誤解を招きそうな表現でもあります。
フィードバックは本来、じぶんを具体的にふりかえり、気づきをうるために不可欠な要素です。
間違いを指摘する、失敗をとがめる、よしあしを寸評をする、といったことが、フィードバックなのではありません。

事実を的確に捉え、ピンポイントで具体的に示すことがフィードバックです。
本来フィードバックとは呼べない「非難」や、フィードバックを受け入れない「感情」があるために、フィードバックはよくない、と言うのだとしたら、それは問題がすりかわっているわけですね。

未知につなぐ

じぶんの姿を見ることはできないので、フィードバックには、他者の手助けや、しくみのチカラがいります。
つまり、フィードバックという他力を借りて、じぶんを分析的にふりかえり、改善や上達に活かすスキルを高めることです。

一方、フィードフォワードは、フォワードということばのとおり「前に・先にむかって」すすめることです。
でも、なんとなく気分を前向きにする、ということではありません。
「先につなぐ」こと。未来、というより、未知に向けて、じぶんをつなぐことが、フォワードするという意味です。

しくみで考える

フィードバックもフィードフォワードも、元来、ものごとの手順、流れのあるシステムの機能として生まれたことばです。
つまり、どちらも「しくみ」の一部であり、お互いに補完的な働きを指します。
情報の面から見ると、以下のような特徴をもっています。

・フィードバック:ものごとが起きた後に、(ものさし、基準との比較で)「差分」に気づけるような、分析的な情報
・フィードフォワードは、ものごとが起きる前に、(これから起きることに対して)予測的・推定的な、直観的な情報(*注1)

ただし、重要なことは、情報を活かして、行動にすることです。
システムとしては、シグナルを次の働きに変えるプロセス。

フィードフォワードも、手助けが必要ですが、先につなげる行為の主体は、じぶんです。
じぶんで、未知につなげることです。
単なる前向きではなくて、未知(わからないこと)へじぶんを前向きにすること。
未知は、未来だけではなく、過去も未知の世界にはいります。

一瞬の直観をしくみに

杉田元宣さんは、こう言います。

「フィードフォワードは、アブダクション(仮説発想)+ディダクション(演繹)です。人間工学は、人間をそれ以外の系と一体とみてシステム的に考えるところにあります。フィードバックとフィードフォワードを組み合わせると位相空間的な螺旋を描くことになりますが、その上昇速度を高めるためにフィードフォワードをおこなうのです。」

アブダクション(発想、仮説推論)ということばが出てきました。(*注2)
「なぜこのような結果になったのだろう?」というふうに、原因の可能性を推定することも、未知へじぶんをつなぐことです。

そのような思考をアブダクション(abduction)といいます。

フィードフォワードとは、未知にむけた心の働きを、ふるまいに変えることなのです。
未知といっても、むずかしく考える必要はありません。
ふだん気づかずにしていることに、カタチを与えればよいのです。

プラクティスの意味④(フィードフォワードは未知につなぐ力)へつづく

出典・参照:杉田元宣『学問と創造のはたらき』、以下のエンパレットなど

(*注1)フィードフォワードは、前もって知らせてくれる情報、という意味合いで使われることもあります。たとえば、料理番組、レシピーの動画を思い浮かべてください。「コツは、水泡がこれぐらいになった時にどうする」とか、「見た目よりも音に耳を傾けて判断」とか、前もって(これから起こる未来を)語ってくれること。あるいは、次はこうやってみよう、といったコーチのことば、はげましなども、具体的であればフィードフォワードです。ただし、その場合でもフィードフォワードの主体はじぶん。情報をもらっても次のふるまいにいかなければ、せっかくのことばもフィードフォワードの途中で途切れることになります。

(*注2)結果から原因の確率的な、可能性を探る仮説的推論。論理学の定義などを読んでもすぐ忘れてしまいますよね。なので、ひとつ事例で覚えておくと応用が効きます。「ある山道を歩いていたら、貝殻が見つかった。こんなところに?昔、ここは海だったのではないか?(ここが昔、海だったとしたら、この山路で貝殻が見つかって不思議はない)という発想です。直観的にひらめくことから、思考をすすめることで仮説になります。(ハッとする事実や、意外な気づきから)なぜそうなっているのか、考えをドライブすること。ひらめいたままでは、途切れてしまいます。道筋に乗せて考えをつなぐこと。じぶん自身を行動に向け、推し進めること。なお、abductionは、映画などで「拉致」という意味でも使われます。遠くに導かれていってしまう、という意味からきています。

プラクティスの意味 ①(しっかり整理すると)

プラクティスの意味 ② (むずかしかったことがやさしくなる、変化のプロセス)

Festina Lente ④ [ゆっくりすることで、深くなる学び](上達の秘訣)