Randall Munroe『Things Explainer』

複雑なことを説明するには、たくさんのことばやむずかしい専門用語が必要だ。

私たちは、いつの間にかそう思い込んでいます。

けれども、使うことばをあえて減らしてみると、ものごとの見え方が変わります。

どれだけ、シンプルに言える?
小学2年生でもわかる?
じぶん自身がわかっている?

ことばの制約することで、考え直すきっかけが生まれます。

ランドール・マンローさんの『Thing Explainer』は、複雑なものやしくみを平易なことばで書いた絵本です。

ただ専門用語を使わない、というだけではありません。使えることばを、小学生にもわかるような1000語に絞り、その組み合わせで、さまざまなものを的確に説明します。

英語に限らず、どの言語も何万という語があります。しかし、日常生活では、平均すると2000語ぐらいを使用しています。1000語もあれば、9割近くのことをカバーしていると言われます。英語も日本語も状況はおなじです。(*注1)

ただ、図鑑のように物事を的確に説明するとなると、どうしてもことばが足らなくなってしまいます。

そこで、マンローさんは、説明に必要な1000語を選びました。限られたことばで、複雑なことをどう表すか。(*注2)

この1000語の制約に、マンローさんの創意工夫があります。

Less is more.(減らせば減らすほど効果が出る)

つかうことばを制約することで、余計なことばを増やさずにすみます。

小さなこどもでも複雑なしくみをひとりで学ぶことができます。

それだけではありません。

何かを人に説明する時に、多くのことばが必要なのは、まだ、じぶんの中で、よく「かみくだかれていない」からかもしれません。

「咀嚼されていない」と言わずに、「よくかみくだけていない」と言ってみる。

平易なことばに置き換える小さなプラクティスが、じぶんの理解を確かめることにつながります。

どれだけシンプルに言えるか。
小学2年生にもわかるように言えるか。

この問いが、「わかっているつもり」をほどく、Unlearningのタネになります。

英語の日常生活の90数%以上をやりとりする表現でつくられ、2500の表現に、約1800の単語が使われています。(*注3)

マンローさんの試みを参考にしながらも(*注4)このような特徴があります。

  • ひと息で言える声セリフ(2秒以内!)
  • ネイティブ小学生が使いこなしているセリフ
  • 手のひらにフィットするカードの1行分(ひと目でわかります)
  • 手のひらにテーマカード100枚、すべてが収まる(3センチの厚み)
  • ことばの原理、統計にもとづき、プラクティスを最大化する構造

短く、平易なことばを組み合わせる。その制約があるからこそ、複雑なこともシンプルに表現できるようになります。

2019年に始まった『英プラ』は、『英語耳°トレイル®』の前身です。

そのころから受け継がれているのは、たくさんのことばを覚えることよりも、限られたことばをつなぎ、使えるようにするという考え方です。

その一例として、身体のしくみを平易なことばで表したエンパレットノート作品をご紹介します。

英語耳°トレイル®の前身『英プラ」カード. (*注6)

人間の身体についての対話です。

What do your lungs do? 肺は何をしている?
They allow me to breathe. 呼吸をさせてくれる。

What does your heart do? 心臓は何するもの?
It pushes blood through my body. 血液を体中に押し出す。

What does your stomach do? 胃は?
It holds and breaks up food. 食べたものを入れて、細かくするよ。

What does your liver do? 肝臓は何をしている?
It cleans my blood. It also makes and stores fuels. 血をきれいにして、エネルギーを生成、貯蔵。

What does your small intestine do? 小腸は?
It breaks up food and absorbs them. 食べたものを細かくして、吸収する。

What does your large intestine do? 大腸は?
A lot of living things help break down different kinds of food. 微生物が食べたものを細かくするのを手伝ってくれる。

What does your brain do? 脳は何をする?
Well, it creates ideas. 考えをつくる。

What does your blood do? 血は何している?
It carries oxygen and throws out the garbage. 酸素を運んで、老廃物を捨てる。

What does your cell do? 細胞は何をしている?
They work together to keep me alive. みんなで協力して、わたしを生かしてくれている。

Well done! すばらしい!
Thanks to simple words. 簡単なことばのおかげ。

まさに、Less is moreです。

使うことばを減らしても、伝えられることは減りません。

限られたことばを工夫して組み合わせることで、ものごとのしくみが見え、表現する力が高まります。

どれだけシンプルに言えるか。
小学2年生にもわかるように言えるか。

この問いかけが、「むずかしいことばを使わなければ、むずかしいことは説明できない」という思い込みをほどく、Unlearningのタネになります。

作(文・挿絵・声にだすことば・声):坂口立考
出典・参照:Randall Munroe『Thing Explainer』、英語耳°トレイル®3

(*注1)2000語を覚えればすべてを表現できるのではなく、少ない数のことばをつなぎ、くりかえすことで、ことばのネットワークをつくっているのです。

(*注2)シンプルライターツール https://xkcd.com/simplewriter/ (この1000語にあるかどうかをチェックするツール)

(*注3)単語の使用頻度について、実は、ほとんどの人が大きな誤解をしています。「日常会話で使うことば」の世界の現実についてこちらの紹介動画にしています。ぜひごらんください。驚くことべきことに出会えます。

(*注4)マンローさんは、Cartoonistでもあり、じぶんで絵を描いてます。英語耳°トレイル®のコンテンツも同様に著者のイラストとアニメーションです。

(*注6) 英語耳°トレイルの前身サービス