
Open, Sesame.(ひらけ、ゴマ)
アラビアンナイト『アリババと40人の盗賊』の物語にでてくる「魔法のことば」として知られます。
宝物を探して、このことばを唱えると「とびらが開く」。
無意味な呪のセリフが命令の合図になった、というふうに受け取られています。
世界諸国のことばに訳されている「ひらけ、ゴマ」。
なぜ、ゴマなの?だれに言っているの?
実は、このことばは、「ゴマ」に語りかけています。「じぶんでひらけ、じぶんで開いてね」と呼びかけているのです。
ゴマの種子は、袋(さや)の中に並んで入っています。成熟し乾燥すると、パックリとさやが開き、中から飛び出してきます。この粒がゴマです。
いわば、実の中にタネが入っている。それが、ある時、魔法のように飛び出してくる、不思議な現象です。
ひらけ、ゴマ。それは、ゴマが自然に、みずから開くところから生まれた、ひらめきのことばだったのではないでしょうか。
ことばでひらくのではなくて、ひらく不思議に、ことばが寄り添い、それをこのセリフで演じてみたところから始まった、と考えると、ひとつ気づくことがあります。
呼びかけです。声をかけること。演じるふるまいに、声をかけている。その声によって、ふるまいを引き立てるのです。声ことばは「手伝う」力。
素直に、ことばを声にするふるまい。声にして、じぶんに語りかけるフリをしているうちに、それが身についてくる。実は、「魔法のことば」があるのではなくて、ことばが「不思議」に寄りそい、力になってくれるのです。
声をかけてあげれば、じぶんでひらく。
出典・参照:アラビアンナイト『アリババと40人の盗賊』
(注)エンパシームも似ています。じぶんでつくる「間」(ま)が実とすると、その中に種(ひと息ごとの声ことば)が入っています。