Empathemian『Simon’s Ant』

Breathe out.(息を吐いて)

なぜかわからないけれど、心が落ち着かない、複雑な気持ち。そんな時、この絵は、少し気持ちを和らげてくれるかもしれません。

一匹のアリが砂地を歩く様子です。アリが歩いた軌跡を描くと、こんなふうに見えるでしょう。複雑ですね。

認知心理学者のハーバート・サイモンはこう言いました。(*注1)

「砂浜上のアリの軌跡は、砂浜表面の複雑さであって、アリの内面の複雑さではない。複雑にみえる行動も大体のところ、人間が置かれている環境の複雑さを映し出している。」

「サイモンのアリ」の環境を、絵にしてみましょう。

Empathemian『Just keep going』

It’s not the mind that’s complex, but the environment. (複雑なのは、じぶんの内面ではなく、じぶんの環境である)

どうでしょうか?

アリは、わざわざ複雑に歩いているのではありません。自然の路にそって歩いているだけなのです。

私たちは、ふだん、こんなふうに思っています。身体の中に心があり、その心が複雑になっている、と。

そして、原因を自分の中に求めたりします。でも、複雑な心の原因は、よくわかりません。

それは「サイモンのアリ」の絵とおなじです。じぶんの周りの環境が複雑だからなのです。

私たちの心は、それを自然に反映しているのです。ちゃんと感じていて、心に映し出しているということなのですね。

こんなふうに言えるかもしれません。いろんな要因が絡まり、それを写している心がある。そこまではよいとしても、そこから先、原因をひとつ、心の中に探ろうとして、話をもっと複雑にしている、と。

心は、世界を写す鏡。

ふだん私たちは、鏡の中にだけ、原因を探そうとしているかもしれません。

Just keep going.(そのまま、つづけて)

さて、サイモンのアリはどうなるでしょう?

そのままずっと、歩いてゆきます。この複雑な場所を、何もなかったかのように、抜け出ることでしょう。

身のまわりの環境は、じぶんと無関係にあるわけではありません。じぶんとまわりの空気は、常にいっしょです。

その意味で、私たちは、いわば、「じぶん環境」を生きている。いえ、じぶん環境そのものなのです。

何か、複雑だな、と思うことがあったら、ぜひ、サイモンのアリの絵を思い出してください。物事が複雑になってきたら、じぶんの環境の風通しをよくしたり、空気をやわらげましょう。

どうやって?

まずは、余計な入力を減らすことです。静かに、すわるだけで、ひと息吐くだけで、変わります。

Be calm.(おちついて)

作(文・挿絵・声にすることば):坂口立考
出典・参照:ハーバート・サイモン『システムの科学』、英語耳°トレイル® Walk through.
以下のエンパレットなど

(*注1) ノーベル賞とチューリング賞を受賞した、認知心理学やシステム科学の先駆者。

Walk through.

ハーバート・サイモン