
Immerse yourself.(ゆだねて、ひたれ)
何かわかりますか?
乾燥マンゴーに唐辛子パウダーでまぶし、あえ、くるんだもの。
マンゴーにチリパウダー。
組み合わせの妙。
お互いが引き立て合っている。
まぶす、あえる、つつみこむ。
三つの動作に、共通するものがある。
異なるもの同士を、近づける。
隔てるためではなく、混ざり合わせるために。
マンゴーにチリパウダーをまぶす。
乾いた果肉に、辛さの粉がまとわりつく。
甘さは辛さに包まれ、辛さは甘さに溶け込む。
どちらも消えない。
どちらも際立つ。

Unlearn the divide. Think the other way around. (分けるという発想を手放せ)
この菓子に、発明者はいない。
起源は、メキシコの路上に立つ屋台。
生のマンゴーに、チリとライムと塩をふる。
Mango con chile y limón。
何世代も前から、市場や公園やビーチで売られてきた味だ※1。
乾燥させ、菓子として棚に並ぶようになったのは、もっと最近のことらしい。
屋台の味を、保存の効く形に移し替える。
チャモイをまとわせ、ドライフルーツとして売る。
無数の露天商と小さな菓子メーカーが、同じ着想を少しずつ変奏しながら育てていった。
Imagine you’re mangos. You become it. (干しマンゴーになって、唐辛子の砂嵐にいるじぶんの姿!)
特許もなければ、創業神話もない。
発明とは、ひとつの閃きだと思われがちだ。
だが、まぶす、あえる、つつみこむという動作には、別の発明の姿がある。
一人の天才による飛躍ではなく、無数の手による、少しずつのずらし。
足し算ではなく、重ね合わせ。
すでにあるものを、少しずらす。
異なるものを、隔てずに重ねる。
甘さと辛さが出会う場所に、名前を持たない無数の手による、発明。
作(文・挿絵・声にだすことば・声):坂口立考
出典・参照:以下のエンパレットノートなど
(*注1) 果物と唐辛子を組み合わせる感覚は、プレ・イスパニック期の食文化にまで遡るとされる。甘さと辛さは、対立する味ではなく、隣り合う味として扱われてきた。
