Empathemian, 「Douglas Engelbart」

The rate at which a person can mature is directly proportional to the embarrassment he can tolerate.(どれだけ成長できるかは、どれだけ恥ずかしい思いに耐えられるかに比例する)

マウスの父、ダグラス・エンゲルバートさんのことばです。
エンゲルバートさんは、コンピュータ・マウスの発明者として知られます。

その画期的な発明のみならず、現代のコンピュータ生活の原型をつくった人です。
現在のパーソナルコンピュータで当たり前に使われている、ウィンドウ表示やテキストリンクなどの技術をはじめ、一般の人々には遠い存在であったコンピュータとの「インターフェース」をつくることで、人類の知性の増強を構想しました。

エンゲルバートさんとの仮想対話から。

立考:マウスを構想したのは、あの論文より前ですよね?(*注1)
エンゲルバート:そうだね。
立:「自然なもの、なんてない、すべては慣れ」だとおっしゃいました。
エ:慣れ親しんでしまえば、人はそれを不自然とは思わない。
立:毎日使う、毎日触れる、毎日見聞きするからですね。
エ:そう。そのようになれば、自然にふれあえる。
立:人間とコンピュータの対話を構想したのはいつでしょう?
エ:V.ブッシュのAs we may thinkにインスパイアされたよ。(*注2)
立:なるほど。カギは人間の側にあると?
エ:そのとおり。そして、それによって、人間の能力を上げること。
立:つまり、コンピュータを楽に使えるようになることですね。
エ:ことばを覚えるのとおなじように、身につけてしまえるような。
立:でも当時、そのように考える人はほとんどいなかったんですね。
エ:いつの時代もそうだろう。
立:はい、よくわかります。
エ:50ー60年代、コンピュータは、身近な存在ではなかった。
立:個人が使えるような代物ではない、というわけですね。
エ:個人が飛行機を扱うみたいな話だったんだ。
立:想像できます。
エ:だから、コンピュータを自由に使うことを目指した私の研究は、どこからも支援を得られなかった。

Imagination takes you anywhere.(想像はどこでもドア)

立:今はだれでもスマホでビデオ対話ができますし、AIも使える時代です。
エ:長く生きられれると、その流れを体験できる。
立:そこへ至る道の扉を開いたのですから。
エ:何らかのデバイスでコンピュータにつながったモニタと対話できれば、と思っていたから。
立:それにコンピュータが相互にネットワークで結ばれていれば、と。
立:博士のマウスは、X軸、Y軸方向に取り付けられた2つの車輪で動きを検知するものでしたね。
エ:当時はコンピュータ上の一点を指す、という考えも理解されなかった。
立:ポインターというコンセプトですか?
エ:そう。どこを指し示すか。
立:それが、対話するためのインターフェースをひらく扉になった。
エ:それから、本にも応用したみたのがハイパーリンク。
立:特定の文を対象化して「リンクをはる」んですね。
エ:そうすれば、文章の階層構造が視覚化できる。
立・なるほど。
エ:考えはいたってシンプル。こんなことができたらいいな、と。
立:ところで、冒頭のことばは、その頃の実感から出てことばですか?
エ:そう。こんなことができたらいい、できるはず、できたらこんな世界ができるってね。
立:ところが、なかなかわかってもらえない。
エ:でも、そうやって「はずかしい思い」を重ねていくことで成長できる。
立:すべてに共通するお話ですね。

Computer Museum, Mountain View, CA

エンゲルバート博士へのオマージュ

今なら、丸いスマホ、と言うとわかりやすいのかもしれません。
が、ちがいます。
丸い理由は、インターフェース機能だけではありません。

単にユーザが愛着を抱くというだけでなく、存在感です。
存在を通して、やりとり、ふれあいが生じます。
コンピュータが察してくれたり、合図してくれたり。
人間の無意識的な力が発揮され、そこからじぶん自身に気づけるようになる。
鏡のようなコンピュータ。

Empathetic Computer, Early days, SomniQ

Imagination takes you anywhere.(想像はどこでもドア)

ふるまいの鏡。
声リズムの鏡。
エンパシーム技術を使って、発話リズムの鏡を制作中。

発明は、問題を解決する技術ではなく、
むしろ、その発明を使うことで解決できる問題を発見するための、扉です。

出典・参照:Douglas Engelbart『Augmenting the Human Intellect: A conceptual framework』、以下のエンパレットなど

(*注1)Douglas Engelbart『Augmenting the Human Intellect: A conceptual framework』

(*注2)Vannevar Bush 『As we may think』

人間とコンピュータの共生と協働(リックライダー博士との対話)

未来はじぶんでつくる [アラン・ケイ博士に会える場所]

考えを発明する① コンピュータという思想

発明は必要の母 ③(エンパシームアプリの母)