「手入れする」プラクティス

プラクティスが続かないのは、空気抵抗や摩擦に似ています。ふだんは、それを無視していますが、何かを続けようとしている間に抵抗が生まれ、何かを思ったり、しようとするだけで、心に摩擦が起きます。これは仕方がないことなのです。が、放っておくと、続ける力は必ず衰えます。

私たちはふだん、「やればできるはず」「続ければいいでしょ」と思いがちですが、それだけでは、摩擦や抵抗を無視して、また補助や補給を考えないのに似ています。

歩いたり、体を動かすときは、水を補給しますね。行動には、補給がいります。
何かを考えるときも、紙に図を書いたりしますね。考えるには、補助がいります。

プラクティスもおなじです。何の補助、補給なしに、長続きはしません。どこかでかならず動けなくなってしまいます。自然の理なのです。

どうしたらよいでしょうか?

小さな手入れを、実際にすることです。プラクティスそのものを手入れすることなのです。そして、それが同時に「プラクティス」になります。

ほどよい補給と補助が不可欠

いちばんの補給は、他者のはげましです。後ろから、端からそっと見ていてくれるだけでよいのです。また、いちばんの、力になるのは、ひとことの声ことばです。声にすることばは、何度でもくりかえし、ふりかえることができるからです。そして、声そのものの力があります。それは一瞬のうちに身体の内外で響き、脳の中のニューロンのつながりを強くしてくれます。だから、じぶんから相手にむかって声をかけることも、じぶんへのエネルギー補給になるのです。

補助となる道具や方法、環境の助け。エンパシームは伴走者になり、鏡になり、環境になり、小さなプラクティスのしくみを支えます。習慣は、小さなプラクティスのしくみなのです。毎日の循環と、導いてくれる路。そしてその路を歩いた時に、ふりかえることのできる路。心身の体験、それをふりかえり、実感して、他者とのむすびつきになることで自覚にかわります。そのときに、知らないうちに、習慣ができているのです。

自分の力でなく、相手の力

いちばん大きな抵抗、頻度の高い摩擦は、自意識です。でも、自意識はなくなりません。悪いことでもなく、じぶんという存在、心の働きなのですから、じぶんではどうしようもありません。そして、自分の望み・自分の目的・自分の損得というふうに、自分が中心になるようにできています。

何か特別なことをするのではなく、自分中心を減らすだけ、働きを和らげるだけで、何かを持続する大きな力になります。

ただし、自意識を和らげてくれるのは、じぶんではありません。

それは、「相手」の力です。相手に委ねることです。身のまわりのもの、相手になってくれる力を借りるのです。身近なまわりのものに、心を向ける時、それが相手になります。じぶん自身の声やふるまいもまた、じぶんの相手になります。

そのように想像すれば、よいのです。そのつもりになる、そういう雰囲気をつくることです。相手と思ってみる間を、ひとつ、つくることです。
あとは、その小さな手入れが自然につながるように、補助を得て、補給をえて、毎日をあゆむことです。

「あゐてにふすいま」とは?

あゐてにふすいまという8つのエンパシームの流れで、ひとつ、間をつくることができれば、それをつなげていくことで、おのずと、それがしくみになっていきます。(自然界では、自己組織化といいますが、その力を借りるのです。)

「あゐてにふすいま」は、「相手に付す今」というひとつのことばでもあります。
「相手に付す、今」とは、相手に委ねる、今この時、という意味です。

1日1回、ほんのひととき、このことばそのものを取り出して、やってみると、必ず身につきます。ほんの少しでも、その気分になれればよいのです。

「相手に付す今」ということばを発するのに、2秒とかかりません。それは、1日の0.002%という、一瞬の時間です。
ひと息で言えることばひとつ。その一瞬の間に、プラクティスの持続があります。あらゆる習慣づくりに共通のエッセンスは、そこにあるのです。

あなたひとりではありません。だれもが、みな、おなじです。
「じぶんは、いつも相手と共にある」ということ。それは、人間に備わった力です。

ミニマルな力、時間と場。そこに、プラクティスを身につける秘密があるのです。

小さな間から「みちゆくときよ」へ

エンパシームメソッドは、まず、自然な流れで「あゐてにふすいま」という、小さな間(エンパシーム)をつくります。そして、エンパシームをくりかえし、ふりかえり、わかちあうことのできる循環「みちゆくときよ」をつくります。それがその人にとっての習慣となる一方、さらに、ひとりひとりのエンパシームの循環が、つながりあうことによって、、関わる人たちの間で助けあい、わかちあう路になるのです。つながり、広がる路を想像してみてください。それが私たちのエンパシームコミュニティです。