の:ねえ、ドラえもん。数ってどこにあるの?
ド:1、2、3、っていう数のこと?
の:そう。
ド:のびちゃんの頭の中だよ。
の:1時間とか30日とかの数は?
ド:1とか、30という「もの」があるわけじゃないよ。
の:じゃ、何なの?
ド:人間が想像でつくりだす概念。
の:想像なの?
ド:そう。数えるという行為を頭の中で行う、その想像力。
の:じゃあ、頭の中にあるんじゃない?
ド:そう言ってもいいけど。脳も身体の一部で、まわりの世界とやりとりしているわけだから、心の働きが生み出している、といった方がいいと思うな。
の:数えるというのは、心で数えているの?
ド:そうだよ。その力はみんなに備わっている。
の:ドラえもんも?
ド:そう。だから、のびちゃんが数える1、2、3と、おなじ想像ができるんだよ。
の:きのう、3回お腹が痛くなったよ。
ド:のびちゃんのお腹の痛みを想像するより、3回あった、ということは、すぐわかる。
の:感覚はひとそれぞれだけど、数の心はみんなおなじっていうことなんだね。
ド:そう。で、それがどうしたの?
の:じかんの話のつづきだよ。ぼくのじかんってのは、数学ではどうなるのかなって。
ド:1時間とか30日とか、じかんの単位は人間がつくった概念。
の:みんなが共通に使うルールなんでしょ。
ド:そう。でも、1、2、3って数えられることが基本。
の:じかんは数えられるの?
ド:人間はバラバラの、ひとつずつの数なら使えるから。そうやって単位をつくればね。
の:じゃあ、ぼくのじかんを増やしたり減らしたりできる?
ド:ほう。いい質問だね。それだけじゃなくて、数を組み合わせたら無限のことまで想像できるよ。
Keep trying.
ド:のびちゃん、継続は力なりって知ってる?
の:うん、どんなことも続けないとダメ、ってことでしょ。頭が痛いなー。
ド:なぜ、続けることが「力」になるんだと思う?
の:うーん。そもそも、その力ってどんな力のこと?
ド:チャンスが増えるとか、可能性が広がるってこと。
の:いいことが起きるチャンス?
ド:そう。くりかえしすることは、数えたらチャンスの数が多くなるっていうこと。
の:どうしてそうなるの?
ド:コイン投げるとどうなる?
の:ウラが出る時もあるし、オモテが出る時もある。
ド:そうだよね。何回かやっただけだと、どちらかのほうが多かったりするよね。
の:うん。でも、くりかえしやっていくと?
ド:1/2になる可能性がどんどん高まる。
の:くりかえし、やればやるほど、そうなるってことか。
ド:ウラかオモテかとか、AかBか、というふうにね。独立に起きるできごとなら、かならずそうなるよ。
の:しずかちゃんが来るか来ないか、みたいに?
ド:そう。ウラが出る時はオモテはでない。どちらか片方が起きる現象。
の:で、それが?
ド:独立事象を足していく時に、ある法則がある。
の:法則?
ド:そう。大数の法則。
の:それを使うとどんないいことがあるの?チャンスを増やせるんでしょ?
ド:そうだよ。独立事象のことをたくさんやるとね。
の:たとえば?
ド:まえの話、思い出してみて。独立のことをくりかえすと、確率が高くなっていくって話ね。
ド:それだけじゃないよ。おなじことをなんどもくりかえしていくことで、気づくこと、わかることがある。
の:どんなこと?
ド:小数の法則。(注1)
の:今度は、小さい数の法則なの?
ド:うん。実は、大数の法則は、ほんものの法則。小数の法則は、まちがいなんだ。
の:にせの法則?
ド:そう、だから法則じゃないんだけど、人間はつい「小数の法則」みたいに考えちゃうから。
の:それ、どんなこと?
ド:ほんのわずかな体験から、結論づけたり、思い込んでしまうこと。
の:ふーん。1回しかトライしていないのに、もうダメだと思っちゃったりすること?
ド:そうそう。サンプルの数が少ないのに、そうやって考えちゃうんだね。とくに失敗するとね。
の:そうか。小数のサンプルなのに、かたよるってことだね。
ド:くりかえしていれば、そういうことにも気づくんだよ。
の:とにかく、続けると味方になってくれるっていうんだね。
ド:そのとおり。くりかえしの持続に、じぶんの可能性が写っているってことだよ。
の:ところでさ、じかんの話と、どうつながっているの?
ド:数も時間も、想像によるもの。
の:だから?
ド:想像の仕方で、じかんも増えたり短くなったりするってこと。
の:そうか。
ド:チャンスの数、可能性の数で、じかんを測ったらいいんだよ。
の:へぇー。そんなことができるといいなあ。
エンパシームは、チャンスをカウントする数の単位です。
じぶんのじかんをつくる味方。
Keep tryingの数をかぞえられるように。
Count your “keep trying.”
出典・参照:Amir D. Aczel『Chance』 (邦題「偶然の確率」)
(注1) ダニエル・カーネマン博士が(ユーモアをこめて)命名したもの。