脳の可塑性(かそせい)ということばがあります。
英語のニューロプラスティシティ (Neuroplasticity) から来ています。
どちらも、ちょっとむずかしそうに聞こえますが、形を後からいろいろ変えられる「プラスチック」のように「脳はやわらかい」という意味です。
ノーマン・ドイジさんは、こう言います。
「脳は、自ら形を変えていく力を持っている。それどころか、自らをつくり直すことすらできる。これまでの常識と事実はちがって、人間の脳は、驚くほどの回復力と環境適応力を持っている。」
反復的な行動に対して高い順応性を持つ脳。脳の障害やリハビリの研究で多くの知見が見出されています。
それは、仏教の瞑想で強調される「マインドフルネス(自分自身の考えや行動を、判断するのではなく、そのまますべてを受け入れるという姿勢で体験し、それを自覚すること)」とも深い関係があります。
瞑想は、穏やかに、周囲にあるものとの関わりに気づくことによって囚われをなくしていく、脳の可塑性に働きかけるメソッドだからです。
私たちの日常生活は、最先端の脳神経科学(理論)と、チべット僧の瞑想修行(実践)という、いわば両極端の中間にあります。
「脳はやわらかい」「日々の反復練習が大切」という知識を得ても、具体的に何をどうしたらよいのかがわかりません。
脳は、自動運転のように、ひとりで動いています。
「反復的な行動に対して順応性の高い脳」とは、習慣化されていること(慣れすぎて、あたりまえになっていること)は気がつきにくい、ということでもあります。
「やわらかい脳」を活かすには、生活の中で適度の変化をもたらすことが大切です。
変化によって、それまでのじぶんに気づくことができるからです。
ただし、頭の中だけで変化はおきません。脳はいつものじぶんに順応しようとするからです。
環境の力を借りましょう。
いえ、そもそも、私たちの「じぶん」という存在は、脳だけではありません。
身心と環境との相互作用によって生きている存在です。
その全部を活かしましょう。どうやって?まず、思い出すことです。
脳に働きかけるためには、声に出して、じぶんに聞こえるように言ってみることです。
エンパシームにゆだねれば、脳にそっと働きかけることができます。
What do I see now?(何が見える?)
What do I hear?(何が聞こえる?)
How do I feel?(どんな気分?)
ひとこと、じぶんに向けて声に出すことは、脳にそっと働きかけるシンプルなプラクティスです。
My self is flexible.
出典・参照: Norman Doidge 『The Brain that Changes Itself』、『毎プラガイド』、「あるチベット僧との対話」