Empathemian 『音の箱・オープンリール』

その箱のふたを開くと、箱ぜんぶが機械でした。

出っ張った2本の棒、小さな四角い箱、それに丸いボタンがついています。

5歳の夏休みでした。

父は、タイヤのようなものをふたつ、片方の車輪の真ん中を片方の棒に、もう片方の車輪をもう片方の棒にはめました。
車輪はヒモでした。そのヒモで、四角い箱とふたつの車輪を結ばれました。ガチャリと音がして、そのヒモがくるくると回りだしました。

「なんだろう、これ?!」思わず、そう言いました。

父がレバーをガチャリとすると、キュルキュルという音がしました。
もう一度ガチャリとすると、「なんだろう、これ?!」
なんと、声が飛び出してきたのです。
それは、ぼくの声だと思いました。

声のほかに、空気の音が入っています。
むこうでセミも鳴いています。
風鈴の音がチリリリンとしました。

「テープレコーダで、ロクオンしたんだよ。」父はそう言いました。

音の箱の中は、茶の間より、ずっと広く、すてきに感じました。
音がヒモに写って、それがもう一度出てくると、さっきよりよくなっているのが不思議でした。

これは、私のエンパシーム原体験です。

50年たって、声のことばに色や模様がつき、じぶんだけの「じかん」をつぶのようにして、並べたり、分かちあったりする体験を楽しむ、本物の「エンパシーム」ができました。

エンパシームを相手に、声ことばを写すふるまい。ささやかな行為で、じぶんの断片が出力されます。
そのふれあいの様子を映し出してくれます。
そして次に、そこに写されたエンパシームが、連なり、つながることによって、色々な想像やひらめきが訪れます。
不思議です。たのしいです。

ふしぎは、たのしい。

Life is wondrous.(生きていることは、不思議)

Inspire wonder with Empatheme.(エンパシームで、ひらめきを)

「ふしぎ [エンパシームの原体験]」

出典・参照: Empathemian 『World of Empatheme』