Empathemian『方程師』

Equations visualize the unknown. (方程式とは、未知の見える化)

「方程式」と聞くと、何が思い浮かびますか?

中学校で習った、数式でしょうか。

2x + 3 = 7

x² + 5x + 6 = 0

連立方程式。二次方程式。 微分方程式。 波動方程式。

もう少し、広げてみると、こんな式もあります。

⚫︎ a² + b² = c²(ピタゴラスの定理)
⚫︎ E = mc² (アインシュタインの方程式)
⚫︎ F = ma (ニュートンの運動方程式)

どれも、左と右を で結んでいます。

これが方程式です。

一歩踏み込むと、「〇〇方程式」ということばはいくらでも出てきます。

ところで、「方程」とは何でしょうか?

昔、中国には、方程師という職人がいました。(*注1)

はかりで、測る人のことです。

右と左を見くらべる。 つりあいが取れた時、両者は同じだとわかります。

この「同じ」を表す記号が、=、イコールです。

一見ちがう「もの」を、同じ「こと」として結びつける。
方程式とは、見えないつりあいを、見える形にしたものです。

A = A は、当たり前です。それだけでは、意味がありません。
でも、A = B と言われると、少し驚きます。

見かけはちがう。でも、奥ではつりあっている。本質は同じである。

方程式とは、未知の〈見える化〉です。

ふだん私たちは、左側だけを見ています。

苦労がある。 試練がある。 うまくいかないことがある。

でも、その右側には、何があるのでしょうか。

苦労に見合う何か。 試練に見合う何か。 手放すことに見合う何か。

A hidden equation takes shape.(見えない方程式がカタチになる)

こういうことばがあります。

楽あれば苦あり。
苦あれば楽あり。

これは、ただ「人生には上がり下がりがある」という意味だけではありません。

これも、ひとつの方程式として見ることもできます。

楽=苦
苦=楽

思い切って、こんなふうに「同じこと」として見立ててみる。すると、目の前の出来事の意味が変わります。

苦労は、ただの苦労ではない。 試練は、ただの試練ではない。

その向こうに、つりあう何かがあるから、苦労がある。
まだ知らないだけ。まだ気づいていないだけ。まだ、未知なだけ。


成功も、同じです。成功の向こうには、たいてい、見えていない苦があります。

ふりかえれば、じぶんを支えてくれた人の犠牲や代償がある。
そのことを忘れているだけ。まだ気づいていないだけ。まだ、未知なだけ。

方程式というカタチが、その未知の等価を見えるようにしてくれます。

作(文・挿絵・声に出すことば):坂口立考
出典・参照:以下のエンパレットノートなど

(*注1) 紀元前100年頃の中国(前漢)の数学書『九章算術(くしょうさんじゅつ)』の第8巻「方程(ほうてい)」に由来。
(方:四角に並べること、程:測る、割り当てること)

英語で「方程式、等式」は、equation。equate は「同じとみなす」「等価とする」という意味です。