
The future is in your hand.(未来は、手のひらにある)
エンパレットは、声と絵とことばのカードです。
声と挿絵と短い文、そこにつながるリンク情報。
かけがえのない体験を、あとからたどれるように残して、人とわかちあえる。
この発想には、源流があります。
源流をさかのぼる「タイムマシン」へようこそ。
1980年、16歳の私は、雑誌の表紙を飾ったSteve Jobsの勇姿を一目見て、とりこになっていました。
でも当時はまだ、よくわかっていませんでした。
コンピュータ?
それで何をするの?
何ができるの?
計算するの?
何だか、よくわからない。
けれども、そこには未来の予感がありました。
コンピュータは、人間の想像力を広げる相棒となる。
その気配をたどっていくと、ひとりの人に行き着きます。ビル・アトキンソンです。
アトキンソンさんは、コンピュータの中の情報を、人が見て、指し、描き、選び、つなげられるものにした人です。
中でも、ハイパーカード(HyperCard)は特別でした。
ハイパーカードは、
⚫︎文字、絵、音、リンクを一枚一枚のカードにおさめる
⚫︎カードを開く、ボタンを押す、別のカードへ移る
⚫︎何枚か重ねると、小さな世界ができる
大切なのは、情報を見るだけではなく、自分で組み合わせることでした。
いま、アトキンソンさんに会えたら、こんな会話をしてみたい。
Back to the origin.(源流をさかのぼる)
立考:いまは、リンクも画像も音声も、すべてスマホにあります。でも、自分で情報を単位化し、組み合わせ、つながりをつくる力は、むしろ弱くなっている気がします。
ビル:便利さは、創作の手ざわりを隠してしまうことがある。
立考:カード化とは、情報化のプラクティスだと思います。声を選び、絵を添え、文を書き、リンクを置く。一枚にする。並べる。たどる。渡す。
ビル:それは、HyperCardが開いたことの続きだね。
立考:でも、HyperCardの源流はどこにあったのでしょうか。どこから、その着想を得たのですか。
ビル:ダグだね。Doug Engelbart。
立考:マウスの父ですね。
ビル:そう。画面の中の一点を、手と指で指し示す。選ぶ。つなぐ。移る。マウスは、そのための入口だった。
立考:なるほど。
ビル:でも、さらに源流をたどれば、ブッシュ(Vannevar Bush)がいる。
立考:ブッシュは、人間の記憶のように、情報を連想でたどる未来を描いた人ですね。
ビル:そうだね。情報は一直線ではない。人の思考も記憶も、結びつきでできている。
立考:Bushの連想の道。Engelbartの手と指のインターフェース。そしてHyperCardのカードとリンク。
ビル:その流れの先に、君のエンパレットがある。
立考:エンパレットは、情報からではなく、ひと声のことばを中心に置きたいのです。
ビル:それが新しいところだ。声には、その人が宿る。
立考:声は、出た瞬間に消えます。でも、カードにのせることで、あとからたどれるようになります。そこに、挿絵と文とリンクを添えることで、声のまわりにあった場面や思いが、もう一度開けるカタチになります。
ビル:それは未来のHyperCardだね。
立考:未来のHyperCard。
ビル:懐かしいソフトの再現ではない。人が自分で情報を単位化し、組み合わせ、つながりをつくる力を取り戻すことだ。
立考:はい。エンパレットは、そのためのメディアにしたいのです。

HyperCardの意義は、Web(インターネット)の前身というだけでは足りません。 大切なのは、情報をカードという単位にしたことです。
⚫︎Vannevar Bushが、情報を人間の記憶のように、連想でたどる未来を描く。
⚫︎Douglas Engelbartが、画面上の情報を、手と指で指し、選び、つなぐインターフェースをつくる。
⚫︎Bill Atkinsonは、その流れを、カードとリンクで、自分の世界をつくれるHyperCardとして開く。
エンパレットは、その流れを、声のほうへ伸ばします。
ひと声を、手のひらで扱える単位にする。
その単位を並べ、たどり、人に渡せるようにする。
情報ではなく、かけがえのなさをカード化するのです。
リンクは、もう世界にあふれています。けれども、自分で情報をカード化し、組み合わせ、たどれるようにするプラクティスは、まだこれからです。
未来のハイパーカードは、情報からではなく、声から始まるのかもしれません。
Link your voice.(声をつなげよう)
作(文・挿絵・声に出すことば):坂口立考
出典・参照:Internet Archive Hypercardstacks、以下のエンパレットノートなど
(*注1)Bill Atkinsonさんは、GUIの発展に大きく貢献し、QuickDraw、MacPaint、HyperCardなどを生み出した人です。文字や線や図形を画面にすばやく描き、ふつうの人がコンピュータで絵を描き、情報をカードとしてつなげられるようにしました。
(*注2) ハイパーカードのアーカイブはこちら。当時のものを、ここで再現できます。
https://archive.org/details/hypercardstacks
