Just wait a while.
なだらかな山野辺の道。春のトレイルは爽快だ。
道の端でひと休みする私のすぐ近く、目の前の花に、一羽の蝶がひらりと舞い降りた。
ゆっくりと羽をととのえている。
そよ風がふいて、なんとも気分よさそうに、坐っている。
エンパシーム 『ゐ』だ!
『ゐ』 ー 共にいる。静かに、坐って、待つこと。
この雰囲気、この光景。私は、佐々木昆(こん)先生のことを思いだした。
みずからを昆と呼んで、虫や花、「小さないのち」を探求した。
子どもの頃、昆先生の家が近所にあった。あの日のことはよく覚えている。
いつもにこやかな昆先生だが、撮影現場の庭では、息をひそめるように静かだった。
立考:ずっとそうやっているの?
昆:そう。
立:生まれるところを撮るんでしょ?
昆:そうだよ。
立:さっきから、じっとしているだけみたい。
昆:そう。静かに待ってる。
立:それだけでいいの?
昆:そうだよ。待つんだ。
立:そうしたら、生まれるの?
昆:そう、他に何もないよ。
立:それで、あんなきれいな写真になるの?
昆:美しいものが、写真に映るだけだよ。
立:撮るんじゃなくて待つんだね。
昆:そう、待つだけだよ。
おなじ空気でつながっている。
いまになって、ようやくわかった。
なぜ、私の目の前に、蝶が共にいてくれるのかを。
静かに待つだけで、蝶とじぶんは、共にあることに気づける。
All you need to do is to learn to practice. Wait for a second. (待つ、をやってみるだけ。1秒待てるように)
出典・参照:佐々木昆『小さい生命』、Empathemian 『こころ・ことば・いのち』、毎プラガイド