Empathemian 『A cinnabar resembles a heart』

Everyday is a gift.(毎日が贈りもの)

7年前、カズコさんは心筋梗塞を患いました。
心臓蘇生手術と臨死体験をへて、以来、毎日を大切に暮らしています。(*注1)

半世紀にわたり、日本の歴史文化「石仏」の研究・探訪のネットワークづくりに従事なさっています。
日本石仏協会の運営、季刊誌『日本の石仏』の執筆・編集は、文字どおり、ライフワークです。(*注2)

先日、こんなお話をしてくれました。

「時々、動悸や息切れがします。
あぁ、もうこれでおしまいかな、なんて思ったりするのですが、横になって休むとおさまります。
重いものを持つのが、いちばん負担がかかるみたいです。」

「医師によれば、左心室への入り口の僧帽弁がちゃんと閉まらず、肺への逆流が起きているそうです。
見せていただいたレントゲン写真で心臓が肥大化していることがよくわかりました。」

「弁の逆流をクリップで止めるカテーテル手術があるそうです。(*注3)
1日でも長く生きられたら、その分、人の役に立ちたい。
エンパシームにも、そんなふうに言っています。」

Imagine an inner conversation between your brain and heart.(頭と心臓の内部対話を想像してごらんよ)

心臓は、身体の隅々まで血液を送るポンプ器官です。
とてもガンバリ屋さんです。
弱音を吐くこともなく、休みなく働き続けています。

いま、カズコさんの脳と心臓が会話をしたら、こんな話になるかもしれません。

♣️(頭):そんなにがんばりすぎちゃ、ダメだよ。
❤️(心臓):だって、仕方がないでしょ、私がやらなきゃ。
♣️:でも、その年で筋トレしているのとおなじだよ。
❤️:だって半分しかないんだから、大きくなるよりほかはないのよ。
♣️:それで弁がずれちゃっているみたいだよ。
❤️:それでも、みんなにポンプで血を送らないと。
♣️:それはとてもありがたいんだけど。
❤️:特にあなたはいっぱい必要でしょ。
♣️:うーん。身につまされるなぁ。悪いね。
❤️:私の宿命なのよ。
♣️:健気だなぁ。でもさ朗報があるよ。
❤️:え?そうなの?
♣️:リークは止められるらしいよ。逆流すると肺に迷惑がかかる。
❤️:そうね。肺さんがせっかくきれいにしてくれた血だもんね。
♣️:かみあわせの悪くなったヒラヒラをつまむんだって。
❤️:すごいのね。でも、自然の摂理のとおりに。
♣️:うん、そうだね。
❤️:何があっても、宿命と思っているの。
♣️:君がいうと説得力あるね、本人だから。

カズコさん(93歳)

Care about the ways back, too.(帰り道もケアしよう)

心臓は生涯にわたり、ハードワークをこなします。
心臓ポンプの耐用年数は15億回ほどだとすると?
カズコさんの心臓は、すでにその倍近く働いてきたことになります。
現代人は耐用年数をとっくに超えて暮らしているのですね。

ガンバリ屋さんのアナロジーは、かなり的確な表現かもしれません。
身体という自然の驚異的な力。
人間がつくる機械では、そうはいきません。

心拍数は、1年間に約3000万回です。
ということは、漏れ・逆流の回数も3000万回。
それでも働き続けています。

これだけの回数をこなす僧帽弁。(*注4)
故障は人口の2%の人に起こる可能性があると言われます。(*注5)
現代の医療のおかげで、逆流を止められることは素晴らしいことです。

カズコさんのお話は、私たちの心と身体について考えさせてくれます。

心臓は鍛えるだけではなく、労ることも大切。
心臓は血液を秒速50センチという勢いで、身体中に送り出します。
でも、それだけではありません。すべての毛細血管から戻ってくる血を回収します。

毛細血管は、身体中で10万キロメートルにおよぶ細い路(地球を2周半する長さです!)。
1秒間に1ミリずつ、ゆっくりと往来して、仕事をします。
身体を休めたり、適度に動かしたりすることで、その流れをよくします。
また心をリラックスさせて副交感神経優位にすると、毛細血管を労ることができます。

生涯を通して、ふだん忘れてしまっていること。
呼吸や、心拍、すべての身体活動のことを忘れています。
でも、時々思い出して、ひとこと声をかけたいですね。

Talk to your heart, literally.(文字どおり、じぶんの心臓に語りかけよう)

(付記)ところで、挿絵は心臓とどういう関係でしょう?
古来、世界各地で紀元前1500年頃には、朱を取り出す水銀鉱石の採掘、交易がはじまっていました。(*注6)
秦の始皇帝は、不老不死の薬を求めて、徐福を日本に派遣しました。(*注7)
真紅の水銀鉱石は心臓そっくりです。(*注8)
その色と形に不思議の力を求めたのでしょう。

出典・参照:以下のエンパレット、記事など

(*注1)エンパレット縁の路へにて紹介。

(*注2)野の仏にみちびかれるにて紹介。

(*注3)マイトラクリップ(僧帽弁クリップ手術)

(*注4)僧帽弁(Wikipedia)

(*注5)Mitral valve prolapse occurs in around 2% of the population(僧帽弁逸脱症は人口の2%に起こる)

(*注6)徳島新聞ー縄文の「朱」生産拠点 国内最大・最古級 徳島県加茂宮ノ前遺跡 

(*注7)共感の精錬・丹生の道(水銀鉱石をめぐるストーリー)

(*注8)辰砂(Cinnabar)

「毎プラの風景「ゆだねる」カズコさん シェア編」

ふりかえる力で身になる

Everyday is a gift.(動画)