Empathemian, Rancho San Antonio Open Space Preserve

Look at it differently.(視点を変えよ)

「英単語は2000語もあれば、日常会話の9割方、カバーされる。」
こんなふうに言われることがあります。(*注1)

カバーされるとは?
単語の出現頻度などを構造的に整備した大規模データベースを「コーパス」と呼びます。(*注2)
前回もお話ししたように、コーパスで見る単語の頻度分布は、少ない数の単語に集中しています。
それを「カバーしている」と言うので、ほとんどの人が誤解しています。

単語の頻度分布がそのようになっていることの裏には、つながりがあります。
2000の単語を覚えていても、つながりを身につけていなければ、聞き取れたり、話せたりしません。

現に日本の高校生は、ゆうに2000語を超える英単語を知っています。
それどころではありません。受験勉強をすれば、何千語も暗記します。
日常生活に出てくるカタカナ語まで含めれば、ざっと5000単語はくだりません。

単語の意味を日本語に置き換えて記憶することと、そのことばをつながりの中で使えることは、別のことです。
知っていることばがつながることを、身につく、といいます。
数少ない単語がつながり、くりかえされるところに、言語の本質があります。
そちらに目を向けて、もう少し、具体的に掘り下げてみましょう。

どんな言語であれ、母語の環境にあれば、自然につながりを身につけます。
5歳ぐらいまでに言語の習得をひと通り完成させている、と言われます。
英語でも、5歳児は、だいたい2000語ぐらいを知っています。
身につけているのは、2000語のことではなく、わずか数百語がつながった網(ネットワーク)のことです。

ことばは、単語のまま使われることは、ほとんどありません。
必ず、ひとつのセリフのなかで使われます。
たとえ、ひとことのセリフでも、それは単語だけが飛んでくるわけでありません。

英プラ紹介動画の解説「映画におけるセリフ頻度と長さの研究から」

Empatheme can help you practice what you learn. (英プラ動画)

私たちは、セリフを出し入れして、生活しています。
セリフとは、声の身体運動です。
声は呼吸でつくられます。

なので、何語であれ、共通の性質があります。
それは、ひとつひとつの発話の時間です。
なぜかというと、息をつぐ時間の中でセリフにする必要があるからです。

英プラの紹介動画をごらんください。

英語の日常会話で話される、ほとんどのセリフは、2秒以内です。
映画の会話を例にとっています。(*注3)
セリフの9割が、2秒という短い時間とはー

使われていることばは、どれも頻度の高いことばです。
何回かのセリフに1回でてくるほどの、頻度上位200語。

その中で、universeと、infiniteという単語がでてきます。

どれぐらいの出現頻度かというと?
infiniteは10万分の1以下、universeでも1万分の1以下です。

日常的には何十万回に1回しか出てこないような頻度の低いことば。
それが、なぜ、すんなりでてくるのでしょうか?
滅多に使わないはずのことばを、覚えられるのは、なぜ?

ちなみに、universeという単語は、日本では高校生1年の「必須単語」だそうです。
universe=宇宙=ユニバースというふうに、英単語を日本語に1:1に対応させる覚え方で、日本語の中にも取り込まれています。
単語の字面を日本語に対応させて、知識として(つまり、日本語に変換して)知っているのです。

では、universeを含んだセリフがすぐに出てくるかといえば、それは別の話です。
じぶんとのつながりとして身につけているかどうか。
それは、端的に言うと、最も頻繁に使うことばのネットワークに結びつけることです。
つなぎとめられているから、いつでも、思い出せて使えるわけです。

Practice what you learn.(知っていることばを使えるようにする)

いまの話を整理すると、この図のようなイメージになります。
じぶんとのつながりがつけることで、ことばは、いわばじぶんの一部になります。

つながりがない間は、使えない知識のまま。
すなわち、言語の習得とは、単に「単語を覚えること」ではなく、
知っていることばを使えるようにすることなのです。

それはどのようにしてするのか?
次回の話をお楽しみに。

ことばは寄りそいあう③ [習得の3本柱]へ(明日の配信後にリンクされます)

ことばは寄りそいあう① [言語の本質はつながり]へもどる

出典・参照:エンパシーム研究所「映画におけるセリフ頻度と長さの研究」、『英プラを詳しく知ろう』

英プラ紹介動画「英語が使えるじぶん」に変わる

(*注1) NGSL Corpus、COCA Corpus、Brown Corpus、BNC Corpus参照。コーパスについては、以下(*注2)

(*注2)コーパス

このエンパレットでは、BNC(British National Corpus)をベースに、エンパシーム研究所にて調査。

(*注3)エンパシーム研究所にて「映画のセリフ」を調査。映画は「A Beautiful Mind」の1場面より。

ことばの本質(前編)[意味を一方的に伝える道具ではない]

英プラを詳しく知ろう (1) エンパシームで解決する英語学習の根本的な課題