No one is alone.(だれもひとりぼっちではない)
「生きたことば」という表現があります。
心をこめたことばづかい、生き生きとした表現。
ことばの力によって、心が伝わる。
ことばは、生きているー
と言っても、
言語の本質について、科学的に捉え直したお話です。
私たちが使うことばの最大の特徴。
何語であれ、かならず、そのようなふるまいが見られること。
それは、ことばはよりそいあう、ということです。
ことばが、よりそう?
聴き慣れない表現ですよね。
でも、事実にもとづいて、そのよう表現しています。
ことばは、つながる。
つながるから、ことば。
The essence of language is connection.(言語の本質は、つながり)
単語をいくつぐらい知っていますか?
数え切れないぐらい、あるでしょう。
いきなり、聞かれてもわからないですよね。
では、英単語はどれぐらい?
学校で習った単語もそうですが、日本語の中に、数え切れないぐらい入っています。
カタカナで書くことばのほとんどは、英語から来ています。
ゆうに、数千単語を知っているわけですね。
でも、たくさん知っていても、英語を聞いたり、話したりするとなると?
単語を知っているだけでは、英語を自在に使えるようにはなりません。
なぜでしょうか?
この「なぜ?」にこそ、ことばの本質があります。
これは、日常会話で使用される英単語の出現頻度を表すグラフです。
それぞれの単語がどれぐらいの頻度で使われるかを、端的に表しています。
しばらく眺めていると、気づくことがありますね。
そうです。やけにかたよっているかんじがします。
片側に集中している、と。
細かい話以前に、特徴をひとことで言い表すことばがあります。
それは、
聞いたことのないことばかもしれません。
孤語とは、100万回のうち、1回しかでてこない単語のこと。
出現頻度が100万分の1、という意味です。
すべての英単語のうち、孤語はどれぐらいあるでしょうか?
その比率を聞くと、きっと驚くでしょう。
なんと、全体の52%。
単語全体の半分以上は、100万分1の確率でしか使われていないのです。
それだけではありません。
全体の85%は、出現確率が10万分の1以下。
つまり、大半のことばは、ほとんど使われないのです。(*注3)
これはどういうことなのでしょうか?
少ない数のことばが、何度もくりかえし使われています。
そのくりかえしとは、おどろくほど極端に、かたよっている、ということです。
じつは、この現象は英語に限りません。
日本語でも事情はよく似ています。(*注4)
少ない単語数がケタ違いに多い頻度で使われる。
その一方で、滅多に使われないことばが大半を占める。
ふたつのことは、表裏一体の出来事です。
Learning is making connections.(学びは、つながりをつくること)
私たちの日常生活では、100万分の1という確率は、無視してよいほど「小さい数字」です。(*注5)
では、言語の大半をしめる孤語は、文字どおり、「ひとりぼっち」なのでしょうか?
いいえ、ちがいます。
ひとりぼっちではありません。
どこかで、つながって出て来ます。
私たちの言語活動は活発です。
100万と聞くと、ものすごく多く感じますね。
でも、数ヶ月のうちには達する数字です。
だから、たまに、そのことばが出てくるような場面に遭遇します。
あなたが毎日、くりかえし使うことば。
ことばは、みなつながっています。
単語を単に知っているだけでは、使えません。
つながりを身につけることで、使えるようになります。
さかさまに考えてみると、わかりやすいです。
なぜ、滅多に使わないはずの単語が、いとも簡単にでてくるのか?
100万分の1の確率の、ひとりぼっちの単語なはずなのに。
それは、つながりを身につけているからです。
つながりは目にみえません。
頻繁に使うことばたちがよりそいあって、音、リズム、イメージのネットワークをつくっています。
その網の目に、たまにでてくることばが、つながるのです。
その、見えないつながりのことを、別のことばでこう呼びます。
Sense(センス)です。身につけた、見えないつながりは、Sense。
日本語に相当することばは?
心(こころ)です。
心があって、ことばを話す、というよりも、
心は、ことばというつながり現象と、わけへだてられない世界なのです。
次回は、さらに踏み込んで、興味深いお話をお届けします。
英プラ紹介動画(ことばの出現頻度のストーリーをまじえて、学習の本質をお伝えしています。次回のエンパレットとあわせてごらんください)
出典・参照:エンパシーム研究所「英プラをもっと詳しく」、英プラ紹介動画
(*注1)
(*注2)孤語(hapax legomenon)
(*注3)以下のリソースをもとに、エンパシーム研究所調査、
British National Corpus、Brown Corpus、COCA Spoken、英プラコーパス
(*注4)国立国語研究所学術情報リポジトリ「日本語コーパス(BCCW)」をもとに、エンパシーム研究所にて分析
(*注5)数学者エミール・ボレルは言います。「個人の尺度で無視できる確率は、10のマイナス6乗=100万分の1。地球的な尺度で無視できる確率は、10のマイナス15乗。」たとえば、あなたが、今日街に出かけて交通事故で死ぬ確率は100万分1よりも小さいので、ふだんは考えません。考えてもどうしようもないぐらい、小さい、ということ。
インナースピーチ 心の中のことばを抽出する(1)思考を形づくる内語