あんな速い球を、なんで打てるの?
プロ野球のピッチャーの球が、バッターバックスに届く時間は、およそ 0.4ー0.5秒。
これは、打とうとしてバットを振り出す時の「神経伝達スピード」の時間よりも速い。
それなのに、なぜ、打てるのでしょうか?
それは、ピッチャーが球を投げる前から、バッターは無意識の姿勢で予測しているからです。
脳神経学者ベンジャミン・リベットの実験によると、人が「何かをやろう」と思った0.5秒前に、すでに神経活動が始まっているといいます。
はじまる前に始まっている?
そうです。実は、私たちの日常の会話でもおなじようなことが起きています。
ことばは、音の連なりを、聞き入れ、反応する身体行為です。
たとえば、英語のフレーズ、What are you making? を例にしてみます。
英語の自然な発話では、このセリフは1秒もかかりません。
発話の、音のまとまり単位を音節と呼びますが、英語の音節は、平均して0.2秒ぐらいです。
英語には、強弱のリズムがあり、弱く短い音節は、0.1秒もありません。
それなのに、しっかりと聞き取り、返事を返すことができます。
ことばは、1秒ほどの単位で、気づかぬうちにふるまえる身体動作。
実は、聞こえる前に、もう聞いているのです。
聞くという行為は、聞いてから大脳処理していたのでは間にあいません。
意識して聞き分けているように思えますが、音の出し入れをすることで身につけた、無意識の力です。
無意識の力は、しぜんに聞こえるような姿勢がある時に、働きます。
姿勢が先にあるのです。
どんな行為も、いきなり、突然に、することはできません。
どんなことにも、その前の行為に、はじまりがあります。
Be open.(心をひらいて)
Begin to begin.(姿勢がしむける)
姿勢が「間」をつくり、「間」が姿勢をつくります。
「エンパシームデータをもとにピンポイントにフィードバック(言語と音声のサイエンス)」
出典:英語トレイル1、「英プラ・miniプラドリル編」、ベンジャミン・リベット『マインド・タイム』