It’s a time capsule.
エンパシームは「時のつぶ」です。
そのつぶには鮮明な光彩があります。
それはじぶん自身へ「共感する時のつぶ」です。
いろいろなきっかけで、エンパシーム同士が、つながりあうようになります。
5歳の夏休み、ある体験がありました。ホタルとりです。「ホーホーホータル、こい。こっちのみーずはあまいぞ。」ホタルに呼びかけます。
渓流のせせらぎ、草の匂い、カゴと網。真っ暗な田んぼのあぜ道を歩いていきます。一匹のホタルが、どこからともなく舞ってきたと思うと、次の瞬間には、ここにもあそこにも、現れます。草むらの中にも輝く光。そおっと近づいていくときの高揚感。
黄色い光が強烈に輝いたかと思うと、すうっとひいていく。その時、上から網をふわりとかぶせ、ホタルをやさしくカゴにおさめます。田んぼ全体が自分の手の中にあるようです。
成人してから、メキシコのウシュマル遺跡で、ホタルの大群に遭遇しました。真っ暗闇の夜でした。だれかが、アグア・ドゥルセと叫んいるのが聞こえました。塩水に対して淡水のことを、アグア・ドゥルセと言いますが、ホタルのいる川は「甘い水」なのです。
この時、すべてが蘇ってくるように感じられました。
いくつもの黄色い光の粒が交錯し軌跡を描く空間。空気がしみこんでくる体感。私は、実はこの、ホタルの「追体験」によって、5歳のときの体験が、あとから「原体験」になったのではないかという気がします。
元となるような体験は、それと結びつく、似たような体験によって、あたかも蘇ってくるように感じられる。後から、そっとしまわれていたものがひきだされるかのような、想起のつながりができるのです。
エンパシームは、じぶんに共感する「時のつぶ」。
その素材つないだり結び合せるような方法。
「Small pieces make my world」(動画)
出典・参照:坂口立考『海の宮』エッセイ「時のつぶ」