Keep it simple.(ひたすら、シンプルに)
何事も、練習なしに、うまくなることはありません。
学びのコアは、プラクティス。
毎日、練習を続けられることが、プラクティスです。
説明はいらないぐらい、わかりきっていることなのに。
プラクティスそのものが、そう簡単にはいかなくなる。
なぜなのでしょう?
続いている間はよいのだけれど、結果を気にするとうまくいかなくなる。
集中している時はよいのだけれど、集中しているかどうかに意識が向くと、集中がとぎれてしまう。
そういう経験、ありますよね?
音楽家であり、パイロットであり、航海士であり、「プラクティス」そのものの研究者である、トーマス・スターナーさんは、こう言います。
「どんな練習も、肝心なのはプロセス、結果ではない。
結果に気が向くのは、「判断」しているから。
いい・わるいの評価を瞬時にしている。
知らないうちに、ある理想の尺度にあわせている。
自分自身の「判断」が実はバリアになってしまうのだ。」
なるほど。でも、「結果は気にせずに」と言われても困りますよね。
なぜ練習をするのかといえば、ある目標にむけて努力して成果を出すためなのですから。
なんか、矛盾していますよね?
そうなんです。
「よい成果をもたらすために練習するのだけれど、練習する時は、それを忘れよ」
逆説的に聞こえるけれども、その矛盾を克服すること自体が、プラクティスには含まれているのです。
なぜ、そうなのか?
実は、私たちの「脳の働き」が、そうなっているのです。
脳は、状況を先回りして、まだ事が起きる前から「失敗しないように」という瞬時の判断をしています。
それは私たちが、生まれて以来、身につけてきた力です。
では、どうしたらよいのか?
「失敗の判断を忘れた状態」で練習することです。
トーマスさんは、4つの心得を説きます。
Simple, Small, Short, Slow.(シンプル、小さく、短く、あせらず)
多くのことをいっぺんにやらない。
少しずつ、短く、くりかえす。
あせらず、ひとつずつ。
シンプルとは、あれこれ、バラバラにするのではなく
ひとつのことを順に、地道にすることです。
何事も急にうまくなったりはしないのです。
なぜかというと、上達とは、小さな「自己修正」の積み重ねだからです。
だから、1日ひとつ、改善できること。それだけ(simple)。
あとは、プラクティスにまかせればよいのです。
出典・参照: Thomas Sterner 『The Practicing Mind』、英語耳°トレイル4 (90)