Empathemian『Sunnyvale, California』

Time doesn’t fly.

じかんは、「ない」。

え?

「時間の流れは、物理的に存在するのではない。心の中で流れる。」

吉田伸夫さんは、このように言います。

「現代物理学の知見によれば、現在という特別な瞬間は存在しない。物理的に現在は存在しないのに、心理的には現在しか存在しないのはなぜか?それは、時間は無意識下で再構成されるからだ。」

「球速の遅い投手でも、ボールが手を離れてからベース上を通過するまで0.5秒程度しか掛からないのに、バッターがボールを打ち返せるのはなぜか?無意識下に予測しているから。」

「熱いと感じたから手を引っ込めた、という出来事があった時、脳は、これを「熱いという知覚があったから手を引っ込めた」という時間に沿ったストーリーに作り替えて記憶する。」

「脳は、リアルタイムで変化する情報をそのまま受け入れることで時間の推移を感じるのではない。入力された情報をいったん神経細胞のネットワークで処理し、その結果として時間感覚を含む意識を形づくる。「時間が流れる」という感覚も、こうした処理を通じて生み出されるものである。」

「ある行動を起こすための意志決定は、無意識下でなされる。脳は、随意運動でフィードフォワード制御している。人間が、物理的な実態と異なって「時間の流れ」を感じるのも、こうした知覚情報の再構成に起因している。つまり、時間の流れは物理現象ではなく、人間の意識の産物である。」

「相対論によると、時間は宇宙全域で均一に流れるのではない。時間は空間と同じような拡がりであり、現在という瞬間が刻々と更新されるような流れではない。」

Empathemian『じぶん・じかんを考える1』

時間は、情報を再構成する脳の働き。意識がつくりだす感覚である、というのです。

のびた:はじめ、「じかんは、ない。」って言うからさ、ビックリしたよ。
ドラえもん:じかんは、物理的な何かではなくて、人間の意識がつくるもの。
の:でも「流れている」みたいに感じるんだけど。
ド:その概念に慣れているから。
の:でも、時間がないと困るでしょ。
ド:そうだね。でも「流れているんじゃない」と思えば、いいこともあるんじゃない?
の:どんな?
ド:のびちゃんの頭の中で感じるんだから、じぶんだけの「じかん」を考えることもできるってこと。
の:そうか。自由につくっていいってこと?
ド:ふだんは、挿絵に描いたみたいに、思っているけど、何かを思い出す時は、べつにこの絵のようになっていないでしょ?
の:そうだなぁ。たのしいことは、あっと言うまに終わっちゃうとか?
ド:楽しかったことは、すぐに、思い出せるとか。なんども思い出せるとか。
の:でもさ、じぶんだけのじかんってどんなもの?
ド:じぶんの身体的な感覚から来るものだろうね。
の:たとえば?
ド:呼吸。
の:呼吸ひとつが、じかんの単位?
ド:そう、気がつかなくても、身体で数えているようなもの。
の:そうか。
ド:ひと息ぶんの呼吸が、いくつかつながって、[いま]ができている。
の:何秒とか何分とかの代わりに?
ド:そう。味わうじかん。
の:あ、そうか。エンパシームは、その基本の単位なんだね。
ド:あたり。じっさいに、つかえる、じぶんのじかん単位。

小さな現在がある。

あじわう時間が、[いま] 。

・お風呂につかって、あー気持ちいいな、っていうじかん。
・一口、あじわう時の、じかん。
・わーきれい!って、感動するじかん。

どれも、数秒のじかん。それがつながって数分のじかん。
その都度、ちがうけれど、みんな、大切なじかん。
それを、くりかえしたり、ふりかえったり、わかちあったりするじかん。

Time doesn’t flow.

My small actions make time.

じぶん・じかんプラクティス②(哲学からのヒント)」


出典・参照:吉田伸夫『時間はどこから来て、なぜ流れるのか?』
Carlo Rovelli『The Order of Time』