Draw a circle slowly.(ゆっくりと円を描く)
それは、小さなひと時をつくることです。
静かにすわり、エンパシームの流れにゆだねます。
薄緑の円をなぞるだけです。
何の構えも、飾りもいりません。
ふつうに、ゆっくりと。
ひと息の呼吸のリズムです。
ぐるりとなぞると、それは『ゐ』の円。
気がついていなくても、どこかせっかちになっていると、『ゐ』の円になりません。
シンプルに、そして、ミニマルに。
ミニマルとは、手持ちの、最小限の力を、最大限に活かす、という意味です。
流れにゆだねれば、自然に備わった力が発揮されます。
自然に備わった力?
そうです。
呼吸、声、周りの空気とふれあう、あなた自身の力です。
それは、ふだん意識されない、力。
意識しようにもできない、自動的な動き。
Go with the flow.(流れにゆだねて)
円を描いてはじまり、もういちど円を描く。
区切りをつけるまでのひと時。
それで小さな[いま]ができます。
>小さな今?
今という瞬間はいくらでもあるでしょ?
そう思うかもしれませんね。
でも、本当にそうでしょうか?
ふだんの私たちは、雑音と雑念に満たされています。
入力しなければいけない情報。
入手しなければいけない知識。
あーしなければいけない、こうしなければいけない、という思いで、心は埋め尽くされていませんか?
すぐ、手にとれる、身近な、小さな[ いま ] はありますか?
夢中、無心、無欲の、小さな[ いま ] は手の届くところにありますか?
A circle is your open mind.(円はわけへだてのない心の表現)
円は古今東西、人間の根源的シンボルです。
『十牛図』をご存じでしょうか?
宋代の中国の、禅の思想を表した詩画です。
こんなストーリーです。
「飼っていた牛が逃げた。それを探しに出る。
足跡を見つけ、牛を発見する。
つかまえ、手なづけ、牛にのって家に戻る。
牛を小屋に入れると、もう牛のことを忘れてしまう。
牛も飼い主のことを忘れ、そこには、ひとつの円相だけがあるー」
人も、牛も、共に忘れている。
「人牛倶忘」と題された円相図。
わけへだてのない、自在な境地の表現。
悟りの境地なんて自分には関係ない?
いえ、そのように構えて捉える必要はまったくありません。
ほんのひと時の想像。
その気になれることが「自在」です。
ほんのひと時のいま、つまり、円をゆっくり描く時間さえあれば。
ひと息の、円ひとつ。
それは、小さな、素振り。
心を和らげ、委ねるひと時をつくるプラクティス。
今日のディード(プラクティスの証)をみると、ほんの数秒の、無意識的な手の動きに、あなたの姿がうつっています。
出典・参照:『十牛図』「人牛倶忘」、『毎プラガイド』、以下のエンパレットなど
「Festina Lente ③ [ゆっくりすることで、速くなる動き]」