Imagination takes you anywhere.(想像はどこへでも連れて行ってくれる)
あんずの花にインスパイアーされたひと時のエピソード。
「横長の綿雲が群をなし、空低く、ゆっくりと移動している。空に向かって垂直にのびた赤い枝の先に、小さな白い花がひとつ。淡い春の光に安心して、枝の中に蓄えていた力が湧き出てきたかのようだ。
柔らかい花びらに顔を近づけると微かに甘い香りがする。この夏、どっしりと腰をすえたような太い幹に支えられた空間に、土と光と空気の恵みを集めて、独特の甘みを備えた柔らかい橙色の実に結ぶ、アプリコット。ここは、あんず畑。
このあんず畑を営む農家の施設に隣接して、サニーベールの郷土史博物館(*注1)がある。土地の開拓・街の建設はマーフィ一家の移住に始まるが、彼らの生活遺品から地元産業の歴史を証言する品々が展示されている。
果樹農園の歴史を物語るパネル展示にある、一枚の画像が目にとまった。それは農園作業に従事する日系移民家族の、わずかな休憩のひとコマだった。その日その時の空気感がありありと感じられる。
果物を育てる心と技術を携えて異国の地にやってきたのだろう。労働も生活も苦労は絶えなかったであろうが、その中でも、この陽だまりの土壌で芳醇な果物をたくさん実らせる工夫と苦心の中に新しいアイディアを培ったことだろう。ふるさとから遠く離れ永住した新天地の労働の中に、それまでとは違った時間の深まり方を感じただろう。
想像が自由にかけ巡る。彼らと同じ土の上を歩き、同じ光に包まれ、同じ空気に触れて、夏に実るあんずの柔らかな手触りと、独特な風味を思い浮かべている。五感が共に働いて、いまというこのひとときの、じぶんを取り巻く空気が「想像の回路」になる。」
I am inspired.
頭の中に想像があるというよりも、想像という現象の中に、じぶんがいるという感覚。
じぶんとは、想像の空気に包まれた、身辺土壌のことなのでしょう。
あんずからインスピレーションをもらった、別のストーリーがこちらです。
Be accountable [後で言い訳が必要になることをしない]
出典・参照:坂口立考『海の宮15号』「サニーベールのあんず畑」
『英プラ』 トレイル 1 (18)I feel inspired.
(*注1)Sunnyvale Heritage Park Museum