演じる心得 / 11.相手に向けて声放て / 相手に向けて声放て

相手に向けて声放て

習うとは、手本に倣うことです。教えてもらうことではありません。倣うとは、まねること。まねるとは、そっくりに似せることです。手本に似ていなければ、まねたことにはなりません。

自分の姿は、鏡の前に立たなければ見えません。練習も同じです。似せようとしている自分の姿を映し出し、それを見ることが「まねる」本質です。そのためには、しっかりと演じる必要があります。演じることで、身につく度合いが格段にあがります。他人事ではなくじぶんに結びつけられるからです。

「ネイティブをまねる」とは、ただ音声をリピーティングすることではありません。ここに多くの人が陥りやすい大きな勘違い (認知バイアス) があります。まねるとは、声を出す時の息づかい、口の形、表情まで似ていることです。その気持ちに仕向けること自体が、もっとも大切な練習なのです。

現実のコミュニケーションと同じように、相手に語りかけるつもりでセリフを演じてください。練習をせずに、いきなりできるはずがありません。字面だけあわせて自己流に言うことは、演じることでありません。英語耳°を獲得するプラクティスの核心は、ここにあります。

演技を練習する役者は、何度もリハーサルを重ねます。また、スポーツや演奏でも本番のために予行演習します。何事も「ぶっつけ本番」にはやるものなどありません。ところが、英語学習となると、「教材が簡単かむずかしいか」「自分はうまいか、下手か」といった自己判断に囚われ、肝心の練習が置き去りにされがちです。

モノマネ芸を思い浮かべてください。モノマネ、歌まねする人の、声や歌い回しを再現しようとしますね。英語も同じです。そっくり似せるとは、できるだけ再現の度合いを高めることです。

相手に語りかける気持ちになること。そのためには、静かな場所にすわり、体の力を抜き、気を楽にします。背筋を伸ばし、顔を上げ、練習した場面とセリフを思い出してください。息を吸って、画像を見て、思い切り、声を放ちます。もちろん、文字に頼らないで、です。

ことばは、演じることで相手と心を通わせる行為です。心を込めて、本当に相手に語りかけるつもりですることが「演じる」ことです。そして、その心がプラクティスの原点なのです。

Speak out, engage as if interacting.
(思い切り 相手に向けて 声放て)