
文字ではなく、音
聞き取れない原因

私たちは無意識のうちに、日本語のカナ文字に頼って英語を覚えようとしています。この「カナモジ式」依存は、自己流のまま「文字を音読する」クセをくり返すことにつながり、耳から入ってきた本物の音にしっかりと耳を傾ける本来の練習を妨げます。その結果、「聞いているつもりで、実は聞いていない」という状態を自らつくり出してしまうのです。
聞き取れない最大の原因は、耳から入ってきた音と頭の中で覚えている音がまったく違うこと——このギャップにあります。文字を読むクセが発動すると、手本のリズム・音とのズレは縮まるどころか固定化し、いくら練習を重ねても上達しない原因になります。
練習の仕方そのものが間違っているのです。その弊害のインパクトに気づかないままの練習は、学習の効果・効率を著しく下げます。
文字を読むクセをなくせ

手本のセリフをまねる時、あなたがどのように音を「認知」しているかが表れます。日本語には、英語の単語をカタカナで表す習慣が根づいているため、英語の音読でも日本語特有のスキーマ(モーラのリズム)が無意識に働きます。その結果、母音を余計に挿入したり、音を伸ばしたり、さらには手本には存在しない音まで発してしまうのです。
単語をうまく発音しようとする意識も、実は「文字を読むクセ」を強め、リズム感覚を崩す原因になります。これを修正する方法は、文字を見ずに手本の音声をよく聞くこと。また、聞き取れない時は、文字をすぐにみてしまわずに速度を落としてくりかえして聞くことです。


Sound is chunked.
(音は、まとまり)

音のチャンクをまねよ

文字を離れ、音のチャンク(まとまり)ごとにくりかえしまねる(そっくりに似せようとする)ことです。余計な音を抑えるだけでも、リズムは驚くほど改善します。たとえば、たった0.1秒の修正が、聞き取りや発音の感覚を大きく変えるのです。この微細な修正の積み重ねこそが、英語耳°への確かな道です。
ところで、一般のシャドーイング練習には、致命的な誤解があります。それは、音が重なってしまうことです。その結果、音をよく聞こうとする練習にならない。覚えることに気が行くために「まねる=再現=似せようとする」練習にはなりません。声音の再現練習が半端で自己流の温存になるリスクが大きい。
動きをアウトプット

第二言語の獲得は、声を出してセリフをまねる実践を通じて、脳と身体の神経回路を変化させることです。知識のインプットではなく、動きのアウトプットを繰り返すことで、認知スキーマと運動スキーマが少しずつ統合されていきます。
Listen to chunks of sound. Don’t read the letters.
(文字でなく 音のチャンクに 耳すませ)