お地蔵さまは、じぶんの鏡。
ある日、電話をとると東北なまりの強い男性からの声。
「わたしは戦争で耳がきこえなくなりました。耳によく効くお地蔵さまがおられたら教えてください。」
「耳のお地蔵さんですか?…」
「片方の耳がほんの少しきこえるので、何とかお話できるのです。もうダメだと諦めているのですけど。もしやと思って先生におたずねします…」
市井の石仏愛好家に何ができるというのだろう。相手が満足できる答えなどない。お医者さんにも見放された人が頼ろうするのは、路傍に立っておいでのお地蔵さまなのか、それならば、こころを決めよう。
「私の住んでいるところには耳専門のお地蔵さんはいないのですが、でもどこかにいらっしゃるはずだから探してみましょう。お宅の近くにお地蔵さんはいませんか?きっと小さなお堂か雨ざらしになっている石のお地蔵さんがおいでになると思うので、毎日お詣りにいらしてくださいな。一生懸命お願いすれば、きっと願いを叶えてくださいますよ。」