「聞き取り」と「なりきり」解説とフォローアップ
トライアル「聞き取り」および「なりきり」の解説とフォローアップです。フィードバックの結果とあわせ、順にごらんください。
聞こえない音、聞き逃す音は、あなたの知らない単語ではありません。知っている単語がブランドスポットなのです。それはあなたが知っている音と、実際に聞こえる音のギャップが大きいからです。ギャップを減らせば、必ず聞こえるようになってきます。
聞き取り
①音のブラインドスポット(聞き取れない音・聞き違う単語)
聞き取れない原因は、あなたが知っていると思っている音と、実際に耳に入る音のギャップが大きいからです。また、弱く短い音は、リズムのあるまとまりで捉えないと、単独では聞き取れない速さがあります。
以下、それぞれのセリフについて、聞こえないところ、聞き違うところの典型例をあげます。ふつうのスピードと、半分のスピードで音声を聞いてみましょう。
🔶 Hey, what have you been up to lately?
(ねぇ、最近どうしてた?)
- what haveが聞こえなかった
- have が are に聞こえた
- latelyが 聞こえなかった
次に、こちらを聞いてみてください。
“What’ve you been”がひとつの「音のまとまり」だと思って聞いてみてください。ここの部分がものすごく速いのです。単語がつながっている、というよりも、いくつかがひとつのかたまりになっています。 これをチャンク((Chunk)と呼びます。
よく知っているはずの単語、haveや youという音(ひとつの音節)がものすごく短いのです。実は、単独では聞き分けられません。ネイティブは、音のまとまりで身につけています。
一方、up to は、ハッキリ、音が長いですね。英語のセリフは、速いところと遅いところが交互に現れます。
速くて聞き取れないセリフも、いったん半分のスピードに落として、リズムを意識すると、聞きやすくなります。これまでの、単語の積み上げ音と比べると、ギャップが大きいために、聞き取りにくいのです。単語がつながっているのではなく、ひとつのセリフがあり、その中に速い(短い)音のまとまりと遅い(長い)音のまとまりがあるのです。音声を聞くときに、リズム「速いー遅い」節回しに耳を傾けて聞き、まねてみてください。
♣️ Not a lot. Just some work stuff. And you?
(特に何も。仕事のことだけ。君は?)
- a lot が聞こえなかった
- some が聞こえなかった
- stuff が聞こえなかった
Not + a + lot のように単語がつながっているのではなく、”Notalot” というひとつのチャンクです。スローのまま、リズムをまねてください。
🔶 I'm trying to clear out my old books. Can you help?
(古い本を処分したいんだけど、手伝ってくれる?)
- outが聞こえなかった、upに聞こえた
- oldが all に聞こえた
- can you が聞こえなかった
音の長いところと短いところが交互に現れるリズムが感じられます。日本語は、カナモジをベースとした「モーラ」のリズムです。すべての音がおなじ長さなのです。英語はひとつのセリフの中でも必ずメリハリがあります。特にはじめは短く、次に長く、というパターンが多くあります。I’m (短)trying (長)to (短)clear (長)out (短)my old (長)books (長)というかんじです。短い音は、それだけを聞き取ろうとしても(短すぎて)聞こえません。セリフでリズムのパターンになれると、聞こえるようになってきます。その第一歩は、おなじようにまねて言ってみることです。スロー再生のリズムでまねてください。
♣️ Sure. Why do you want to clear them?
(うん、いいよ。何で処分するの?)
- clear が聞こえなかった
- them が聞こえなかった
Why、do、you、want 、と単語ひとつひとつの積み上げでは、とても間に合いません。英語は、まずリズムがあり、その中に音があり、文字やイメージと結びつく、と思ってください。リズムをつくるのは音のチャンクです。”Why do you wanna”がひとつのまとまりです。スローで聞いて、リズムがまねてください。そのリズムのまま、速めて言ってみましょう。
🔶 I've read them all. I need more space.
(もう全部読んじゃったし、部屋が狭くなったから。)
- I’ve が I に聞こえた
- I’ve read が聞こえなかった
- them が聞こえなかった
I’ve read の部分が短い(速い)です。たいていの場合、弱く短く、速いチャンクがはじめに来ると思ってください。I は聞こえたけれど、I’ve とは聞こえなかった?音を聞き取るのは、短い音への感覚をつけることと、話の流れをくむことの両方がいります。どうして処分するの?だって、もう全部読んじゃったから、というやりとりです。them は本棚の本全体を指します。たいてい、it や themといった対象を指すことばが、セリフの中に入っています。
I need more space.は聞き取れたのではないでしょうか?音が長く強くゆっくりだからです。
♣️ So how do you want to do that?
(で、どうやってやるの?)
- how do you wanna が聞こえなかった
how do you wanna が速いですね。あなたがいつも音読しているリズムとのギャップが大きいはずです。その結果、howが聞きもらします。スローで聞いたリズムをまねて、だんだん早く言ってみましょう。
🔶 Well, I was going to give them to my school.
(学校に寄付しようと思ってたの。)
- was going to が聞こえなかった
- give them が聞こえなかった
- to が聞こえなかった
was gonna / give them がリズムチャンクです。スローのとおり、まねて、それをだんだん速めて言ってみましょう。ひとつのセリフには、弱く短く速い部分と長く強くゆっくりの箇所が交互に現れます。日本語は同じ長さのカナモジリズムで音を積み上げますが、英語は違います。あなたとの知っているリズムと実際に聞いているリズムが大きくなると、ブラインドスポットになります。ブラインドスポットは、知っている単語、知っているつもりの音に起きます。
♣️ Great. We need to use a cart or something, right?
(そりゃ名案だね。カートか何かいるね?)
- We need to use が聞こえなかった
- a cart が a card に聞こえた
- a cart or something が聞こえなかった
話の流れをつかめると、本を運ぶものがいる、という勘が働くのですが、慣れないとなかなかそうはいきません。スローで聞いてまねてください。need to use / a cart or somethingがひとつのリズムチャンクです。a card of somethingも、音が一体化しています。そのため、cart のT音がD音のように聞こえます。
🔶 Exactly. My dad has one outside.
- one が聞こえなかった
- one outside が聞こえなかった
oneが聞こえないかもしれません。a cart or something を指しています。外にお父さんの使っているカート(荷台)が一台あるよ、と。one outside とふたつの単語ですが、音のまとまりは ”one outside” です。そこに耳を傾けて聞いて、スローのリズムをまねて、リズムが感じることからです。Exactlyも、よく聞いてみてください。Exaclyのように、T音は省かれて聞こえるはずです。
♣️ Sounds like a plan. Let's get started.
(なるほど。じゃ、さっそく始めよう。)
- Sounds like が聞こえなかった
- get started が聞こえなかった
Sounds like a plan. Let’s get started. はじめてしまおう、というニュアンスの慣用表現です。セリフのまま、リズムとともに身につけることです。
🔶 We'll put them in boxes first.
(まず、箱づめからね。)
- We’ll が We に聞こえた
- We’ll が Will に聞こえた
- in boxes が聞こえなかった
- first が聞こえなかった
♣️ One step at a time. We'll get it done.
(順にやろう。すぐ終わらせられるよ。)
-
One step が聞こえなかった
- at a time が聞こえなかった
- We’ll が聞こえなかった
- get it done が聞こえなかった
get it done はリズムチャンクです。片付けてしまおう、というイメージが結びつきます。
② 聞き取りスコアについて
以下の測定内容をフィードバックします。
全部で12あるセリフは、単語数100、音節数 110からなっています。
1回通してストーリーを聞きます。次に、セリフをひとつずつ、2回まで聞いて書き取ります。
以下に示すように、あなたの(1)音の聞き取り精度と(2)意味の把握度 を測ります。
(1)音の聞き取り (Phonetic Awareness)
聞き取りにくい「弱く短い音節」や「聞き取りにくい単語」に重みづけをして採点します。それぞれの単語に、1〜3点を割り振り、全体150点のうち、正確に捉えている単語の割合を測定します。
(2)セリフの把握精度 (Comprehension Level)
セリフの意味の把握に影響する単語に重みづけ (1〜3のスケール)して採点します。12のセリフのうち、内容を86%以上捉えているセリフがいくつあるか、で全体を評価します。
聞き逃している音がいくつもあったり、肝心な単語を聞きちがっていると、ひとつのセリフを把握しているとはいえません。たとえば、3つのセリフの把握が不十分だった場合、9/12=75% となります。理解レベル (Comprehension) のおおよその目安になります。12のセリフから構成される対話、十分に把握していないとストーリーの意味が不明瞭になります。
なりきり
なりきるとは?
①入力スピード(発話までにかかる時間)
文字を追おうとするのではなく、手本の声を思い出すのです。入力スピードは、セリフの文字が表示されてから、あなたが発話するまでの時間を測ります。
いい間違えても構いません。まず、すべてのセリフをすべて発話することが大事です。言い直すと、その時間は加算されます。スムーズにテンポよく言うためには、手順「まねる」でしっかりウォームアップしてください。
②出力スピード(発話時間)
手本セリフの発話時間合計と比較した、あなたの発話時間合計の割合。
手本をまねるプラクティス(リピーティング)をひととおりやった後、なりきるプラクティスをします。手本をできるだけ再現するつもりで、思い切って声に出しましょう。じぶんで出力できるレベルが、聞き取りに反映されます。セリフを言い直した時、最後のセリフで測ります。
③発音(音素ごと精度)
発話内のすべての音素の精度を分析します。子音は風を切る音、母音は口の内部で響かせる音。ていねいに、しっかりまねて出力の精度を高めます。次に、英語の最大の特徴ともいえる、強弱のリズムをつけていきます。いっぺんにはできませんので、順に練習していき、徐々に出力のスピードをあげていきます。